母の願い(おいたちより)
おいたちについて、ほぼ順序に沿って綴りつづけてきた。
これまでは両親のことが中心であったが、そろそろ私自身のことが中心となる時分が近づいてきた。
父の行く末についても時折織りまぜながら、先に進めていきたい。
(これまでのおいたちはカテゴリ「おいたち」にあります。
小学校高学年の頃、「なぜお父さんと結婚したの?」と母に尋ねた。
母は「あなたが大人になったら話してあげる」と答えたのだが、父母の離婚後、私が18歳の時、母がその問いかけに答えてくれた。
お父さんはお酒を飲んでいない時はとても優しい人だった、子煩悩で仕事も一生懸命やる人だった、とまず話してくれた。
お父さんとの結婚は祖母(母の母親)から反対されていた。
父は家から勘当にされ、故郷の土地を離れて暮らしていたことから祖母は「どこの馬の骨かもわからない、そんな人と結婚するな。それでも結婚するのなら親子の縁を断つ!」と母に告げていた。
しかし母は親の反対を押し切り、駆け落ちして父と結婚したという。
その後、父は酒にのまれると暴れはじめた。
「親が言っていたことが正しかった。実家に帰ろう。」と、身重の身で幼い私を連れて遥か遠く離れた実家を訪ねた。
しかし祖母から「帰れ!顔も見たくない。二度と来るな!」と叱責され、家の門をくぐることもなくトンボ帰りしたという。
祖母は戦時まもなく夫を亡くし、それからひとりで10人の子どもたちを育て上げただけあって、とても気丈な人だった。
「やっぱり親が言うことって正しいのよね…。
この先あなたにも色々なことがあるだろうけど、お母さんの二の舞はしたらダメよ。二の舞だけはしないようにね。それがお母さんの願いよ。」
そう言って母は話を締めくくった。
…しかし、しか~し、
お恥ずかしながら、残念ながら、私はバツ2である。
二の舞どころか、その倍、四の舞なのであった。(つづきはまた。)
=お若い方のために=
勘当とは、親が子に対して親子の縁を切ること。
駆け落ちとは、親から結婚の許しを得られない男女が、しめし合わせてひそかによそへ逃げること。