ブラックホール に 毛が三本
ブラックホール が Qちゃんだったとは。
ブラックホール は質量が大きな恒星(太陽の30倍以上)の最後の姿である。
先日記事で、ほとんどの天体は公転、自転し、太陽系自身も銀河系の中心の周りを公転し、ブラックホールには回るのと、回らないものがある、と少し触れた。
今回は、そのブラックホールに焦点をあててみる。
まず恒星の一生から追ってみよう。
恒星の一生
星の誕生
星間物質のかたまりが周りの星間物質を引きつけてしだいに大きくなり、やがて自分の引力でだんだん収縮し、中心温度が約1,000万℃に達すると原子核反応がはじまる。(太陽程度の質量の星で、ここまでの期間に約5,000万年かかる。)
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主系列星(しゅけいれつせい)の時代
星の一生のなかでもっとも長く、太陽程度の質量の星で約100億年ぐらい続く。(太陽は誕生してから約46億年。主系列星時代の中間ごろである。)
この時代は原子核反応によりエネルギーを放出し、水素がだんだん減りヘリウムが増えていく。
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赤色巨星
水素が枯渇してヘリウムの核が出来、ヘリウム核の表面では核融合が進行し、ヘリウム核の質量が増える。温度が上昇し星の外層は膨張、非常に大きな赤い星になる。
これ以降は星の質量によって最後が違ってくる。
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質量が太陽の8倍以下の星。
そのほとんどが赤色巨星から白色わい星になる。
きわめて高温・高密度の白色わい星は、後はただ冷えていくのみである。(冷めると黒色わい星になる。冷め切るまでに1000億年もの時間がかかると計算されている。)
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大質量の星。
赤色巨星から超新星爆発へ
大質量の星は一生を終えるときに大規模な爆発を起こす。
質量が太陽の4~8倍の星は、爆発によって星が飛び散り、後は何も残らない。
質量が太陽の8~30倍の星は、爆発によって散りぢりになり中性子星(パルサー)となる。
太陽のおよそ30倍より重い星では、中性子星の中心部分が重いため自分の重さを支えられずに崩壊し、ブラックホールになる。
また、飛び散ったガスやちりは、ふたたび新たな星を生み出すための材料(星間物質)となる。
(参考:webilio星の一生)
ブラックホールになる前の星は、大きさ、明るさ、温度、形など様々な性質を持っている。
ブラックホールになるとき、これらの性質の大部分が消え、質量、角運動量(回転)、電荷の3つの性質だけとなる。
これをブラックホール脱毛定理(無毛定理)という。
「ブラックホールは毛がない(毛なし)」という、まるで冗談のようにも聞こえるこの定理。しかしこれは、れっきとした宇宙物理学・一般相対性理論における概念の一つである。
そして日本においては「ブラックホールは毛が三本」と表現されている。
さながら「オバケのQ太郎(オバQ)」、Qちゃんである。
ブラックホールは物理量の在りかたによって、4つの種類に分類できる。
(毛の生え方により、分類できるわけだ。)
通常ブラックホールといえば、三つの物理量のうち質量のみをもつ、自転しないシュヴァルツシルト・ブラックホールを指す。
質量に加え角運動量を持つブラックホールも存在する。角運動量を持つ、つまり自転しているブラックホールだが、これをカー・ブラックホールという。
他二種も含め表であらわすと
ブラックホールのモデル | 質量 | 角運動量 | 電荷 |
シュバルツシルト・ブラックホール | ○ | × | × |
カー・ブラックホール | ○ | ○ | × |
ライスナー・ノルドシュトルム・ブラックホール | ○ | × | ○ |
カー‐ニューマンブラックホール | ○ | ○ | ○ |
である。
なお近年、ブラックホールに吸い込まれた性質の情報が、消失するのではなくブラックホールに保存されている可能性も考えられるようになってきた。
もしそうであるなら、情報が引き出されることによって「ブラックホールが増毛する」ことも考えられる。そうなると増毛定理(フサフサ定理)も無きにしもあらず、ということになろう。
そもそもは、
「なぜ、ブラックホールには回るものと回らないものがあるのか?」という、壮大な疑問からブラックホールについて色々調べていたのだが、結局のところ、私の稚拙な脳ミソでは「毛が一本と、毛が二本の違い」ということで理解するに至ったのであった。
【執筆後記】
なぜ角運動量を持つと自転するのか?
なぜ天体は自転するようになったのか?
これら疑問について、一番参考になりそうに思えたのはこちらである。
ちなみにこれは北海道大学OCW(オープンコースウェア)上で公開されている配信教材のひとつである。
オープンコースウェア、OCWというものは初めて知ったのだが、大学等で正規に提供された講義とその関連情報のインターネット上での無償公開活動のことを指している。
これはなかなか面白い取り組みであり、OCWには役立つ情報がいっぱいありそうである。