『 把酒問月 (酒を把つて月に問ふ)』

 酒問月 』と『 奇皇后 』

漢詩『 把酒問月 』と、韓流ドラマ『奇皇后』のご紹介。

桜が散り、暖かな春の陽気を全身に感じていた今日このごろ。
けれども先日は突然「う~、さぶっ」と震えあがるような寒さ。
気候も日経平均株価も、まだ少し不安定なことがあり、油断大敵である。

そんな中、晴れた日の日中は、鮮やかな新緑が目に飛び込んできて気持ちいい。(同じ山の秋の風景はこちら目にまぶしい緑。写真では少々見づらいが、山の斜面に藤の花。

街中の街路ではハナミズキが花開き始めた。

どの風景も、初夏の訪れが近くなっているのを感じる眺めである。

そして、
散る前にカメラに収めておいた桜の写真も、見納めにアップしておこう。
4月上旬、夜の散歩中に道端の桜をiPhoneで撮影したものである。👇

近所のコンビニで350ml缶ビールを一本買う。
花より団子ならぬ、月見酒、花見酒。(まるでおっさん。)
この月、この桜、この風景のもと、おしゃれな盃で一杯やったら最高だろうな。
ここで中国の詩人李白の詩『把酒問月』をふと思い出す。

先に書いたが、実際はビール片手に道端を散歩中。
中身も外見もほぼおっさん化、である。

『把酒問月』は『月下独酌』とならび、大好きな李白の詩のひとつ。
とても美しい詩である。
今日は原文、書き下し文、現代語訳ともにご紹介。

(原文)
把酒問月 李白
靑天有月來幾時
我今停盃一問之
人攀明月不可得
月行卻與人相隨
皎如飛鏡臨丹闕
綠煙滅盡淸輝發
但見宵從海上來
寧知曉向雲閒沒
白兔搗藥秋復春
姮娥孤棲與誰鄰
今人不見古時月
今月曾經照古人
古人今人若流水
共看明月皆如此
唯願當歌對酒時
月光長照金樽裏

(書き下し文)
酒を把(と)って月に問う 李白
青天 月有りて来(こ)のかた幾時ぞ
我 今 盃を停めて 一たび之に問わん
人 明月を攀(よ)じんとするも得(う)べからず
月行 却(かえ)って人と相(あ)い随(したが)う
皎(きょう)として 飛鏡(ひきょう)の丹闕(たんけつ)に臨むが如し
緑煙(りょくえん) 滅び尽して 清輝(せいき)発す
但(た)だ見る 宵に海上より来たるを
寧(いずくん)ぞ知らん 曉(あかつき)に雲間(うんかん)向(むか)いて没するを
白兔(はくと) 薬を搗(つ)いて 秋復(ま)た春
姮娥(こうが) 孤(ひと)り棲(す)みて 誰(たれ)と隣(となり)せん
今の人は見ず 古時(こじ)の月
今の月は曾經(かつ)て古人(こじん)を照らせり
古人 今人(こんじん) 流水の若(ごと)く
共(とも)に明月を看(み)ること 皆 此(かく)の如し
唯(た)だ願う 歌に当り酒に対するの時
月光 長(とこし)えに金樽(きんそん)の裏(うち)を照らさんことを

・飛鏡(ひきょう):空を飛ぶ鏡で月の形容。
・丹闕(たんけつ):仙人の住む宮殿の赤い門。
・綠煙(りょくえん):夜の青い靄。
・姮娥(こうが):「嫦娥」。太陽を射落としたことで知られる英雄「羿(げい)」の妻である嫦娥(姮娥)が、西王母から貰った不老不死の霊薬を飲み一人月へ昇り月宮で寂しく暮らすことになったという中秋節の故事「姮娥奔月」による。また、その足下にいるウサギは「月兎(玉兔)」で、玉の杵と臼で不死の藥をついているという。

(現代語訳)
酒盃を手にして月に問いかける 李白
青空に月が存在するようになってから、どのくらいの時間が経ったのだろうか。
私は今、盃を取る手をとめて、ちょっと月にお尋ねしたい。
人間は明るい月を手を伸ばして引き寄せることはできないが、しかし、月の歩みは、反対に人の歩みにつれて、どこまでもついて来てくれる。
白く輝いて、空を飛ぶ鏡が仙人の朱色の宮殿にさしかかったようである。
緑色の夕靄がすっかり消え失せると、清らかな光が現れる。
月が夕方、海上から昇ってくるのを誰もが見ているが、明け方に雲間に沈んでいくのを、どうして知っていようか、知らないのである。
白い兎が、月の中で不老不死の薬を秋も春も搗いている。仙薬を飲んだ姮娥は、孤独に月の中に住んでいて、隣に誰がいるだろうか、誰もいるはずがない。
今生きている人は、昔の月を見ることはできないが、今出ているこの月は、大昔からずっと、昔の人を照らし続けてきたのである。
昔の人も、今の人も、人間はみな流れる水のように去って行くのである。そして、昔も今も、人々は明るい月を眺めては、私と同じように永遠の月に対して果かない人の命を嘆き、物思いにふけっているのだ。
人生のはかないことは致し方ないとしても、ただ私が願うことは、歌をうたい、酒に向かっている時だけは、月の光がいつまでも黄金(こがね)づくりの酒樽の中を照らしてほしい、ということである。
(書き下し文、現代語訳は「小さな資料室」より)

韓流ドラマ『奇皇后 〜ふたつの愛 涙の誓い〜』では、この詩をあつかっているシーンがある。
このドラマは、高麗の国から貢女として元の国に入った主人公(キ・ヤン)が、元の皇后にまでのぼりつめた生涯を描いた作品である。
奇皇后は実在した人物だが、その生涯には謎が多いため、ドラマは多数の創作を交えて構成されている。

『把酒問月』は、主人公キ・ヤンが元の皇帝(タファン)が毎日寝る前に本を読み聞かせるシーンで読まれている。
ドラマ内ではこの他に、高麗の王(ワン・ユ)が杜甫の有名な詩『春望』を詠むシーンもある。
ドラマのストーリーの各所に“落井下石”、“苦肉の策”、“混水模魚の計”といった故事成語、論語、兵法などが織り込まれており、大変面白い内容のドラマに仕上がっている。

主人公(キ・ヤン/スンニャン)を演じるハ・ジウォンがとってもキュートだ。
アクションシーンも見逃せない。
高麗王ワン・ユを演じているチュ・ジンモは、かなり私のタイプである。
周囲に聞くと、元皇帝タファン役のチ・チャンウクの方が好き!という声も結構あるが、なんにしてもどちらもイケメンである。

「出演者インタビュー」なるものも見つけたので、それも載せておこう。