事件

おいたち, 父 STORY, 父はじまり~サスペンス

我が家で 事件 起こる。

事件 それは高校2年生の時のことだった。

単身赴任中の父が、お腹の大きなおばさん(妊婦)を連れて家に帰ってきた。
「今から家族会議をするので集まりなさい」という父の一声でみんな集まった。

父は開口一番、
「(母を指差して)こっちが古いお母さん、(おばさんを指差し)こっちは新しいお母さん、これからみんなで仲良くやっていこう!!」とのたまった。
わが父ながら、この時はさすがに「おいおい、おっさん、いったい何を言い出すんだ、頭がおかしいんじゃないか?」と思えるほどあきれてしまった。

母はというと,

「この人と一緒になっても苦労するだけですよ。悪いことは言わないから、一緒になるのはやめておいた方がいい」と不倫相手を説得している。
横で聞いていて「いや、そういうことじゃないだろう…」と思わずずっこけそうになった。

「そんなことはありません、この人は優しい良い人です」と言うおばさん。
「私も最初はそう思いましたよ。でもやめておいた方がいい」と母は説得を続けている。

ところがこのおばさん、「お腹の子供がもうすぐ産まれます。このままではこの子は戸籍がない子になってしまいます。それはあまりにかわいそうです。
この子のために別れて下さい」と母に詰め寄っている。
「たしかにこどもは可哀相よね…」と母。
(いや、そんなことを言っている場合じゃないんだが…)

おばさんには夫が居た。今でいうW不倫。
お腹の子も父の子なのか夫の子なのか定かではない。
それにしても、うちの父もいかさま非常識だが、不倫相手の自宅に上がりこみ、年頃の娘たちの前でこういうことを言うおばさんが一番非常識に思えた。

もちろん父もとても非常識だ。だがそれにはある理由があった。
すでに没落し今はその跡形さえ残っていないが、父の生家はいわゆる地方財閥で、自宅で舞踏会が開かれ、執事が身の周りの世話をしてくれる、父はいわゆるおぼっちゃま育ちであった。
昭和初期、「浮気は男の甲斐性」と言われていた頃、父のお父さんはお妾さんをたくさん抱え、父はお妾さんや異母きょうだいが居る家で、ごく当たり前のように育った。
幼少の頃から父にとってはそれが「当たり前」だったのだ。

ゆえに、「こっちは古いお母さん、こっちは新しいお母さん、これからみんなで仲良くやっていこう!!」と何も悪びれることなくニコニコしながら言ったのだった。

植えてから10年以上経たが一度も実をつけたことがない庭のさくらんぼの木で蝉が鳴いていた。
ちょうど今頃の季節に起こったできごとだった。
どんなことがあっても私は父が大好きだった。(続きはまた)
事件 が起こったとき、庭のさくらんぼの木で鳴いていた蝉のイメージ画像

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Posted by Sun



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