鮮明 な 記憶
鮮明 な 記憶
鮮明 な 記憶 。これは4歳くらいの時の出来事である。
うたた寝をしていた時に「お風呂に入りなさいよ」と起こされてねぼけまなこでお風呂場に行った。
浴室の扉を開けると浴室の奥にある排水溝の上にヘビが居る!
「そんなはずはない!」と何度も目をこすりよ~く見てみたが、何度見てもヘビがいる。
それもまるで漫画で書いたうん○のように、すばらしくきれいにとぐろを巻いてこっちを見ている。(かれこれ50年生きてきたが、あんなにきれいにとぐろを巻いたヘビはあれ以来見たことがない。)
部屋に戻り母親に「ヘビが居る!」と叫ぶ。「何を寝ぼけたことを!お風呂場にヘビが居るわけないでしょ!」と思いきり叱られてまた風呂場へ。
やっぱり居る…。…
それからは「8時だョ!全員集合」のコントみたいに、お風呂場と母親の間を何度も往復し「本当にヘビがいるんだよっ~!」とまるで志村けんの如くであったが、母は全く信じない。
あまりにひつこい私に「いい加減にしなさい!」と逆上した母がやっとお風呂場に一緒に見に行ってくれた。
母はヘビが大の苦手でありその驚きぶりは凄かった。
それからは大騒ぎ。近所中の人がうちのお風呂場のヘビを見にきた。
とぐろをまいて真っ赤な舌をペロペロ出しているヘビを見て大人の男の人たちもみんな怖がって帰っていく。
「きっと誰かが捕まえてくれる」と思ったが、みんなヘビを見るなり「怖い~」と言って帰って行く。
その当時、うちのとなりにはめちゃくちゃ綺麗で妖艶な未亡人のご婦人が住んでいた。
そのご婦人はヘビのことを知るやいなや、火箸を持ってやってきた。
美しい未亡人は近寄るだけで襲い掛かかる素振りで威嚇してくるヘビを、なんのこともなく、いとも簡単に捕獲した。
普通4~5歳くらいのことはあまり覚えてなかったりするのだが、この時のことは今も鮮明に記憶に残っている。
こわもてのおじさんが捕まえていたら記憶に残らずに忘れていたかもしれない。