父の戸籍謄本

2018-01-30

相続を承認するか、放棄するか、それを決定する猶予期間は3カ月。
だが、その期限内に父の財産を調べきることはとても不可能であった。

銀行、役所での照会には故人の戸籍謄本が必要であった。
しかし、父の戸籍がどこにあるのか、分からなくなっていた。

元々、父の戸籍は父の生誕地にあった。
父の生家はその昔、地方財閥であった。
生家はとっくの昔に没落して跡形も残っていなかったが、父は生家にこだわりを持ち続けていた。

父は私が幼少の頃から「お前の本籍地は〇〇〇、お前は〇〇家の子孫、〇〇家の長女」と私に教え込んだ。
おかげで私は、幼稚園児にして本籍地の住所番地をそらで言えた。
私が成長しても父のそれはずっと続き、うっとおしい!ウンザリと思えるほどであった。
父は、それほどまでに自分の生家や戸籍を大事に思い、誇りにしていた。

死後、父の本籍地に、戸籍の取り寄せを申請した。
住所はそらで覚えていたので、申請書類はすぐに書けた。

数日後、戸籍課から連絡がある。
「お父様の戸籍はこにはありません。」という。
ではどこにあるのですか?と聞くと、「それは分からない」という。
どこに戸籍が移ったのかは分かるので、そこに問い合わせ、申請するように、ということであった。

戸籍が移った地は、父が死亡した県にある町だった。
戸籍が移った時期は、父が「おかしなことに巻き込まれてしまったようだ」と言ってきた時と重なっていた。
ところがまた数日して、「ここに戸籍はありません」と連絡がある。

一体父の戸籍はどこにあるのだ?

義母に聞けば分かる。そう思い、義母に連絡し「父の戸籍がどこにあるのか教えてください」とお願いする。
ところが義母は「絶対に教えない。」と言う。
理由を聞いても「教えない。」と言って一方的に電話を切られてしまった。

戸籍課によると、このような場合、戸籍が移った地を転々と追っていくしかないという。
なので、次に戸籍が移った地に申請する。
すると、また「ここには戸籍はありません」という連絡。

一体どうなっているんだ?
普通、引っ越しをしたら住民票を異動するが、戸籍を移したりすることはない。
なのに、父の戸籍は転々としている。

助っ人(金融や法律の専門家)の方々曰く、こうやって戸籍を転々とするのは、借金を重ねて逃亡する輩(やから)の常套手段だという。
難波金融伝・ミナミの帝王」じゃないが、義母の背後に「金融や法律のダークな抜け道」を知る者がついている可能性があるという。
前妻から聞いた話もあり、その可能性は大だった。

これまでに父は結婚、離婚を繰り返したが、本籍を移したことは一度もなかった。
生家や戸籍を大切にし、誇りにしていた。
父はこのことを知っていたのだろうか?

結局、父は死亡までの3~4年あまりの間に、3回転籍していた。

父の戸籍謄本がやっと全部揃った。
相続を決定する期間内(3カ月)に全財産を調べることは無理なので、家庭裁判所に期間を延ばしてもらう申し立てを行い、それが認められた。(相続の承認又は放棄の期間の伸長の申し立て

これ以降、私は父が死亡した地に赴き調査するが、さらなる事実が次々発覚していくのであった。(つづく)