サスペンスの展開

義母が送ってくる書類とは一体何の書類なのか?
書類がどんなものかも分からず、それにハンコを押していいものだろうか?
妹たちはそう言って不安そうだった。私も不安だった。
なので、義母に電話して、その書類について尋ねることにした。

義母に電話した。

「お父さんには借金がある。
あなたたちは相続放棄をしなければ、もし私(義母)に万が一のことがあった場合、あなたたちは今以上に借金を背負うことになる。だからこちらが送る書類に署名、押印してすぐに送り返すように。」
と言う。

「その書類は何の書類なんですか?書類の名称は?」と問うが、義母はそれに関しては答えない。
「届いたら署名・押印して送り返せ」の繰り返しであった。

借金の話はにわかには信じ難い話だった。
父から借金のことなど聞いていないし、父との最後の会話でも「(死後)おまえたちが心配するようなことは何もないから安心して」と話していた。

この電話のやりとりのあと、私は相続、相続放棄について調べた。
行政書士や弁護士になれるんじゃないか、というほど調べた。調べ続けた。
「私(義母)に万が一のことがあった場合、あなたたちは今以上に借金を背負うことになる。」という義母の話は嘘、偽りだと分かった。(義母と血縁関係ではない=義母の借金を背負うようなことはない。)

義母はわたしたちに相続放棄させたがっている。
それはなぜだ?

日本の法律では、相続を放棄するか、承認するかを、死を知ってから三カ月以内に決めなければならない。この三カ月の猶予期間を過ぎてしまった場合、相続を承認したとみなされ、財産も負の財産(借金)も相続することになっている。

無料の法律相談で弁護士に相談してみたが、まず、父に借金があるのか、財産があるのか、全ての財産を明らかにする必要がある、ということだった。

後日、義母は私たちの元に書類ではなく、別のものを送ってきた。
それは目を疑うようなものばかりだった。

義母が送ってきたのは
どこどこにいくら借金があるのかを列挙した、義母の手書きメモ
父名義のマイナス残高の通帳コピー
何年も昔の病院の領収書、検査結果の束(近年、直近のものは全くなし)
父が飲んでいたというサプリメント

それと、「あなたたちは私のことを疑っているようだが、私は疑われるようなことは何もしていない」という義母の手紙。

そして肝心の、義母が話していた大事な書類は結局送られてこなかった。

様々な疑問はあったが、それまでは義母のことを疑ってはいなかった。
書類が一体何の書類なのか?知りたいだけだった。

だが、こういうものが送られてきて、「あなたたちは私のことを疑っているようだが、…」と言ってきたことで、やましいことがばれるのを必要以上におそれ、否定している義母の様子が伺えた。
「父の死には何かがある」、そう感じた。

サスペンス劇場が大好きな母は、義母に対し早くから疑いを持ち、様々な推理を展開し披露してくれた。
これ以降、様々な事実が発覚していく中、ちょっとカヤの外に居た母のおもしろおかしな推理は、私にとってはむしろ救いだった。

なぜなら、カヤの中は本当に信じられない、耐えがたい事実の連続であったからだった。(つづく)