「梅味噌を送るから待っていて」

おいたち, サスペンス, 父 STORY

突然の父宅訪問以降、父は度々私と孫に会いたがり、会う予定も組んできたが、会う前日、当日になって突然入院するということが2、3度あり、結局会えずじまいだった。

以来、父宅に電話をするも、「具合が悪い」と言って寝ている、と義母に電話を取りついでもらえない。
どんなに調子が悪くても、孫の声は絶対に聞こうと無理を押してでも起き出していた父である。
その父が電話に全く出ないというのは考え難いことであった。しかし義母はずっとそう言い続けた。

パトカー
(Illust by Illust AC)

たまたま義母が留守の時、父と電話がつながった。
「先日、(義母に)殺されそうになり警察を呼んだ」と父が言った。
笑い話か冗談だと思い最初は笑ったが、そうではなかった。
そのときは本当に身に危険を感じ、警察を呼んだということだった。

警察を呼んだが「夫婦喧嘩は犬も食わず」と簡単に片付けられ、それからは仲直りもした、ということであった。

この電話で「先日から腹の調子が悪くて、ずっと腹を下している」と聞いた。
ちょうど冬の間に猛威をふるうロタウイルスが流行っていたので「気を付けてね」と伝えた。

なぜだか父は突然、「もし父さんが死んでも、家族に骨を拾ってもらえないかもしれんな」と言うので、「死して屍拾う者なし」(時代劇、大江戸捜査網のナレーション)みたいなことにはならないから、安心して~(笑)と私は言った。
それを聞いて父は大笑いした。

冗談抜きで、父さんが死んだ時は「骨は瀬戸内の海に散骨してくれ」と嫁に頼んである。だから心配しなくていい。お前たち(子供たち)には心配をかけることがないように、お父さんはちゃんとしてあるから、嫁にもそう頼んであるから、何も心配することはないよ、安心しなさい。
と父は言った。

電話の最後に「梅味噌をそちらに送るよう嫁に頼んだから、明日くらいには届くと思う。楽しみに待っていて」そう言って父は電話を切った。

これが父との最後の会話だった。

いつもと変わらぬ会話の途中で、突然父が語った言葉。
後になって思うと、とても不思議な力、不思議な導きがあったように思えることであった。

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Posted by Sun



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