父のカルテ

おいたち, サスペンス, 父 STORY

(現地調査のつづきである。)

(Photo by photoAC)

財産調べをするとともに、父の死についても調べていた。

あらかじめアポを取ってあった病院に行き、医師から話を聞いた。
病院に搬入された時、父は体の数か所を骨折していたことを知る。

それから、義母は入院時に「(父は)5~6日前より下痢」と病院に伝えていた。

父は最後の電話で私に「先日から腹の調子が悪くて、ずっと腹を下している。」と話していたので、5~6日どころでない。
病院の記録でも「(皮膚の)ただれがひどい、今までずっと下痢をされていたようだ、血便もされていたのではないか。ドクターに上申を」とあった。

義母は父が「話もできるし元気だ」と言っていたが、入院時には意思疎通も出来ない状態であったことが分かった。

記録には「何か言おうとされるが聞き取れない」「言葉あるが聞き取れない」と何度も記してあった。父は何を伝えようとしていたんだろう。

(by-illustAC)

そして、看護師らが訪室する度に「体動かしカスラ(呼吸器)を取っている」とあった。亡くなる前までずっと…、だった。
「(娘が)会いに来てくれた!」、そう思ってのことだろう。

スタッフから「お父さん、ずっと待っておられたんですよ。」
と再度告げられた。
今度は叱責でなく、ニッコリしながらそう言ってくれた。

義母は「(病院にお願いして、父の)腹水は一滴も抜かなかった」と死後、私に説明していたが、これは嘘だった。
腹水は死亡直前に主治医により抜かれていた。量は6リットル。
腹水を調べれば何かが見つかるかもしれない。見つかるはずだ。
腹水が残っていないか病院に聞いてみた。
だが、残っていないということだった。

父のメガネは「病院で失くした」と義母は言ったが、入院時からメガネをかけていなかったそうだ。
父はメガネをかけないと何も見えない。
メガネをかけることもないほど、状態が悪くなって病院を受診したということでもある。

「あなたを溺愛していたお父さんが、あなたに何も伝えずに逝くわけない。お父さんはあなたに遺書やメモを残そうとしたはずだ。だから義母はお父さんからメガネを取り上げたのだろう。」母がそう言った。
私もかねてから同じように思っていた。
全てが「死人に口なし」の状態になった今、それは確信になっていた。

カルテの写しを後日家に郵送してもらった。
それを見てはまた涙したが、泣いてばかりではいられない。

まだ、相続放棄の件もカタがついていない。
父名義の家があることも分かった。年金も。

義母が借金のメモと手紙を送ってきた際、「お父さんは以前から病気でした」と父の手書きのメモも同封してあった。父の字で「日付、病院名、診断名」が順を追って書かれていた。
父は前妻と居た頃、体はどこも悪くなく、病院にかかることもなかったが、3~4年あまりの間に入退院を繰り返すようになった。父は自分の体の変化に気付いていたのだろう。
義母はこのメモを、疑われるようなことはしていない証拠として送ってきたが、私はその逆に思った。父の最後のメッセージに思えた。

この頃、現地の警察署に「父の死」について相談した。
遠方のため、最初は電話で相談であった。(つづく)



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