父は何処に?(おいたちより)

おいたち, 父 STORY, 父はじまり~サスペンス

前回の話はこちら

少しだけ親子水入らずでお父さんと話をした際、
お父さん大丈夫かな?とちょっと心配に思ったのだがその予感は的中した。

ある日、父から一本の電話があったのだが、それ以降、父とは全く連絡がつかなくなってしまったのだ。

「おばはん(嫁)と別れたい」「お母さんの所に帰りたい」、そういって私に電話をしてきたのが最後だった。

電話の内容は、
父の給料が振り込まれているキャッシュカード、通帳、現金、それらを嫁が持ち出し子供も連れて居なくなったということだった。
「だったら別れられるやん。よかったね」と私が言うと、出て行った嫁は「籍は絶対に抜きませんから」と言っている、という。
父が働いた給料は毎月嫁の手元に入り、今や父の手持ち金は300円。昨日から何も食べてない、と言う。
電話口の父は「みんなのところ(私たち家族の元)へ帰りたい」と言っていた。

…、先日父から聞いた”父が母とヨリを戻そうとして母に会いにいった件”について、後日私は母に確認し詳しい話を聞いていた。
母は「以前のお父さんは堂々として男らしかったけど、会いに来た時はしょぼくれてくたびれた男になってしまっていた。そんな姿を見ると情けなくて仕方がなかった。だからお父さんに「しっかりしなさいよ!そんな風にしょぼくれたあなたなど見たくもないわ!さっさと帰って!!」と言って追い返した」ということだった。

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「ヨリを戻す気はないの?」と母に聞いてみたが、「以前のように堂々として立派なお父さんなら考えただろうけど、あの様子じゃ無理。お父さんとヨリを戻すことはない。」と母は答えた。
だからお父さんがいくら戻りたがってもそれはもう無理だ…。

「みんなの元に帰りたい」と言う父に対し、酷だけど「私はお父さんとお母さんのヨリが戻るのを望んでいるけど、お母さんとのことは今となってはどうしようもないよ…」そう伝えた。
私が父に伝えることができたのはそれだけだった。

それを聞いて父は「俺が馬鹿だった…」と電話口で何度も何度も言った。

私は自分が食べるのが精一杯で父を助けてあげる余裕はない。
それと、「父に深入りするのはやめておけ!」と妹たちからの忠告もあった。

妹たちは「お父さんは私たちに何もしてくれなかった。お母さんは今までひとりで私たちを必死で育ててきてくれた。そんなお父さんと連絡を取り合うなんて、お母さんがかわいそうでしょ!!」といつも言った。
確かにそれは一理あるかもしれないが、それでもやっぱりお父さんは何があってもお父さんであることに変わりはない。
妹たちは私の思いを汲み、「お母さんに目立たないようにするのなら」を条件に、父と連絡を取り合うのは大目にみてくれていた。
そんなこともあり、私は父に直接手を差しのべてあげることはできなかった。

だからこの時の父からの電話も「おばはん、そのうちに戻ってくるよ」と最後は軽く受け流して電話を切ったのだった。
そしてこれが直近では最後の父からの音信となった。

後日、父宅に電話すると嫁と子らは家に戻ってきていた。
しかし父はどこに居るのか知らない、と言う。
父の家族は慌てるでもなく、心配するでもなく、「さぁ、どこに居るのか知りません」と繰り返すだけだった。

以降、父はどこにいるのか、生きているのか、死んでいるのか、それすら分からなくなってしまった。

テレビ公開捜査で訴えるSun
…その後、5年の歳月が流れても父の消息は分からないままだった。
父を見つけるには「長い間生き別れていた家族が番組内で再会を果たすというテレビ公開捜査」くらいしかないんじゃないか?ということになり応募もしてみた。

しかし私以外の家族(妹・母)はみんな「顔出しはNG!」と希望していたために、番組では取り扱ってもらえなかった。

父はいったい何処に…?
(つづきはまた)



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