最初の結婚のその後(おいたちより デンジャラス編)
前置き:今回の話は少々ショッキングでデンジャラスな内容になっております。
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式は挙げず入籍のみ済ませ、結婚生活が始まった。
ふたり一緒に会社に出勤し、デスクも隣同士、仕事が終わったら一緒に帰宅する、そんな友達夫婦であった。
会社では同じ苗字だとややこしいので、それまでどおり旧姓で呼ばれていた。
夫は家に帰ると私のことを「Sunちゃん」と呼んでくれた。しかし私は自宅でも夫のことをそれまでどおり苗字で「○○さん」と呼んでいた。(入籍したとはいえ、急に愛称やファーストネームで呼ぶのはとても恥ずかしくて出来なかった。今思うと笑えるのだが、なにせ手をつないだことさえなかったのだから。)
しばらくして夫が「結婚したのに間借り生活というのは男としてしめしがつかない」ということで新居を借り、そこに引越しした。
引越し後、荷物を整理していると押入れからケースに入った注射器が出てきた。「ん?なんでこんな物があるんだろう?」不思議に思った。
「押入れに注射器があったんだけど、あれは何?」夫に尋ねた。
夫は「栄養剤を自分で注射していたんだよ」と答えた。
「○○さんって、自分で注射が出来るの?すごいねー。」と素直に感心していた私であった。
新居には夫の親友がよく遊びに来ていた。
ある日、夫が不在時にその親友がやってきた。
「せっかく訪ねてきてくれたのにごめんなさいね」という私に、その親友が「奥さんにひとつ大切なことを伝えておくよ」と言って、話を始めた。話の中身は衝撃的なものだった。
○○くんは覚せい剤をしていた。 僕はやめるよう説得していたけど、現在やめているのかどうか分からない。見つけたら、奥さんとして注意してやめさせてほしい。
そういう内容だった。
仕事が出来て、真面目で、とてもそんなことをするような人には見えない夫が…、と信じられなかった。
でも押し入れに注射器があった。親友の話は真実だろう。
私は夫に直接聞いた。
夫は「今はもう止めたよ」と答えた。
以前勤めていた会社の先輩が「全く疲れない良い薬があるんだ」と勧めてくれたのがキッカケだったという。
芸能人やチンピラが逮捕されたりという話はよく聞くが、まさか田舎街の、こんなに身近でそんなものが流通しているとは思いもよらなかった。
事実を知ってからも「もう止めた」という夫の言葉を信じようとしていた。
夫と覚せい剤というのが自分の頭の中でどうしても結びつかなかった。しだいに私は精神的に不安定になり、精神科の病院で診てもらうことになった。
それまで私が持っていた夫のイメージと、新たに知った夫のイメージがあまりにも相違しすぎているため、心の中がきちんと整理できなくなり精神的にたいへん危険な状態にある、今すぐ夫と離れて生活をするように、という診断だった。
結婚から一年後、私は離婚した。
同じ頃、友人たちは大学生活を満喫していた。
早々と離婚を経験した私は「なんだか私は地を這っている虫みたいだ…」と感じるほど、その時は相当落ち込んだ。
それまでの私は「失敗したくない」「失敗は怖い」、と何事にも臆病で真面目一辺倒のカチコチ人間だった。しかし、離婚を機に私は変わった。
少し角がとれて人間が丸くなった。
こんな私を、家族は「ねえちゃんは頭の中のどこかのネジがぶっ飛んだ!ぶっ飛んで以前よりマシになったなー」と批評している。たしかにそうかも。
(つづきはまた)